Dante最適設定機能

Dante最適設定機能

1. 機能概要

Dante最適設定機能とは、デジタルオーディオネットワーク「Dante」に最適な環境を簡単に構築するための機能です。
ユーザーはDante用の個別の設定(QoSの設定、IGMPスヌーピングの設定、フロー制御の無効化設定、EEEの無効化設定など)を意識することなく、まとめて簡単に設定できます。

2. 用語の定義

Dante
 Audinate社が開発したデジタルオーディオネットワークの規格。
ADECIA
 ヤマハの遠隔会議システム。遠隔会議用プロセッサーやマイク、スピーカーをLAN(Dante)で接続する。
ADECIAコンポーネント
 ADECIAを構成する機器(遠隔会議用プロセッサー、マイク、スピーカー)。
LLDP
 隣接機器に対して自身の機器情報を受け渡すためのプロトコル。

3. 機能詳細

Dante最適設定は、次の2つの方法で適用できます。

  • LLDPによる自動最適設定

    • ADECIAコンポーネントから独自のLLDPフレームを受信することで自動的に適用

  • Web GUIからの手動最適設定

    • 本製品のWeb GUIのProAV設定ページから適用

Dante最適設定機能によりまとめて設定される項目の一覧を以下に示します。LLDPによる自動最適設定の場合、ADECIAコンポーネントのファームウェアバージョンにより適用対象項目が異なります。

設定対象

機能

コマンド

適用対象項目

LLDP (ADECIA V2.5以前)

LLDP (ADECIA v2.8以降)

Web GUI

システム全体

フロー制御を無効

flowcontrol disable

QoSを有効

qos enable

DSCP値による送信キューの最適化

qos dscp-queue 8 2

qos dscp-queue 26 3

-

qos dscp-queue 34 4

-

qos dscp-queue 46 5

qos dscp-queue 48 5

-

qos dscp-queue 56 7

qos dscp-queue [上記以外] 0

no qos wrr-weight [0~7]

-

リンクローカルマルチキャストの常時転送

l2-unknown-mcast forward link-local

-

LLDPを有効

lldp run

-

-

VLANインターフェース

シャットダウンを無効

no shutdown

-

-

未知のマルチキャストをフラッディング

l2-unknown-mcast flood

-

IGMPスヌーピングを有効

ip igmp snooping enable

IGMPスヌーピングのバージョンを設定

ip igmp snooping version 3

IGMPスヌーピングの高速脱退を有効

ip igmp snooping fast-leave auto-assignment

-

IGMPクエリー送信機能を有効

ip igmp snooping querier

IGMPクエリー送信間隔の設定

ip igmp snooping query-interval 30

IGMPレポート抑制機能を無効

ip igmp snooping report-suppression disable

-

IGMPレポート転送機能を有効

ip igmp snooping report-forward enable

-

IGMPパケットのTTL値検証機能を無効

ip igmp snooping check ttl disable

IGMPパケットのRA検証機能を無効

ip igmp snooping check ra disable

-

IGMPパケットのToS検証機能を無効

ip igmp snooping check tos disable

-

マルチキャストルーターポート転送抑制機能を有効

ip igmp snooping mrouter-port data-suppression enable

-

PTPパケットの常時転送を設定

l2-mcast flood 224.0.1.129

-

l2-mcast flood 224.0.1.130

-

l2-mcast flood 224.0.1.131

-

l2-mcast flood 224.0.1.132

-

l2-mcast flood 239.254.3.3

-

LAN/SFPポート

QoSトラストモードをDSCPに設定

qos trust dscp

フロー制御を無効

flowcontrol disable

EEEを無効

eee disable

MRUを設定

mru 1522

-

L2MSフィルターの設定

l2ms filter disable

-

-

BPDUフィルターを設定

spanning-tree bpdu-filter disable

-

-

LLDPエージェントの作成

lldp-agent

-

-

LLDPの送受信を有効

set lldp enable txrx

-

基本管理TLVの設定

tlv-select basic-mgmt

-

3.1. LLDPによる自動最適設定

ADECIAコンポーネントから独自のLLDPフレームを受信することで、「Dante」を利用する上での最適な設定を自動的に反映させることができます。

LLDPによる自動最適設定は、 lldp auto-setting コマンドで設定します。
本製品の初期設定では、LLDPによる自動最適設定は 有効 です。

ADECIAコンポーネントは、以下の内容が含まれるヤマハ独自のLLDPフレームを送信します。

  • EEE (省電力機能)の無効化設定

  • フロー制御の無効化設定

  • Diffserv base QoSの設定

  • IGMPスヌーピングの設定

本機能が有効、かつ、該当するLLDPフレームを受信した場合、システム全体、受信したVLANインターフェース、受信したLAN/SFPポートのrunning-configに対して設定を自動的に反映します。
ただし、自動的に設定される項目のうちどれか一つでも工場出荷状態とは異なる設定がされている場合、本機能は動作しません。

copy running-config startup-config コマンドや write コマンドで保存すると、次回以降の起動時に使用する startup-config へも反映されます。

自動最適設定後に機器が接続されたポートをリンクダウンしても自動的に追加された設定はそのまま保持されます。

本機能は物理インターフェース (LAN/SFPポート) のみで利用できます。リンクアグリゲーション論理インターフェースでは利用できません。
また、LAN/SFPポートのモードはアクセスポートのみで利用できます。トランクポートでは利用できません。
スタック機能に対応した機種でスタック機能が有効な場合は利用できません。

本機能を使用するためには、LLDPフレームを受信できるようにする必要があります。
そのため、事前に以下が設定されていることを確認してください。

  • lldp run コマンドで、システム全体のLLDP機能を有効にします。

  • lldp-agent コマンドで、対象のインターフェースにLLDPエージェントを作成します。

  • set lldp コマンドで、LLDPフレームの送受信モードを設定します。

本製品の初期設定では、LLDPフレームの送受信は 有効 です。

3.2. Web GUIからの手動最適設定

Web GUIでのDante最適設定方法は、 ProAV設定機能を参照してください。

4. 関連コマンド

関連コマンドについて、以下に示します。
コマンドの詳細は、コマンドリファレンスを参照願います。

操作項目 操作コマンド

LLDP によるDante自動最適設定機能の設定

lldp auto-setting

LLDP機能の有効化

lldp run

LLDPエージェントの作成

lldp-agent

LLDP送受信モードの設定

set lldp

基本管理TLVの設定

tlv-select basic-mgmt

フロー制御の設定(システム)

flowcontrol

フロー制御の設定(インターフェース)

flowcontrol

QoSを有効

qos

DSCP-送信キューID変換テーブルの設定

qos dscp-queue

送信キューのスケジューリング設定

qos wrr-weight

QoSトラストモードの設定

qos trust

シャットダウン

shutdown

マルチキャストフレームの転送設定

l2-mcast flood

未知のマルチキャスト転送の設定

l2-unknown-mcast

IGMPスヌーピングの有効/無効設定

ip igmp snooping

IGMPスヌーピングのバージョンの設定

ip igmp snooping version

IGMPスヌーピング高速脱退の設定

ip igmp snooping fast-leave

IGMPクエリー送信機能の設定

ip igmp snooping querier

IGMPクエリー送信間隔の設定

ip igmp snooping query-interval

IGMPパケットのTTL値検証機能の設定

ip igmp snooping check ttl

IGMPパケットのRA検証機能の設定

ip igmp snooping check ra

IGMPパケットのToS検証機能の設定

ip igmp snooping check tos

IGMPレポート抑制機能の設定

ip igmp snooping report-suppression

IGMPレポート転送機能を有効

ip igmp snooping report-forward

マルチキャストルーターポート転送抑制機能の設定

ip igmp snooping mrouter-port data-suppression

L2MSフィルターの設定

l2ms filter

BPDUフィルターの設定

spanning-tree bpdu-filter

EEE設定

eee

MRU設定

mru

5. コマンド実行例

5.1. LLDPによる自動最適設定

LLDPによる自動最適設定を有効にします。
port1.1でLLDPの送受信ができるようにします。

Yamaha#configure terminal
Yamaha(config)#interface port1.1
Yamaha(config-if)#lldp-agent (1)
Yamaha(lldp-agent)#set lldp enable txrx (2)
Yamaha(lldp-agent)#exit
Yamaha(config-if)#exit
Yamaha(config)#lldp run (3)
Yamaha(config)#lldp auto-setting enable (4)
1 LLDPエージェントの作成、モード遷移
2 LLDP送受信モードの設定
3 LLDP機能の有効化
4 LLDPによる自動最適設定の有効化

6. 注意事項

  • LLDPによる自動設定

    • 本機能は物理インターフェース (LAN/SFPポート) のみで利用できます。リンクアグリゲーション論理インターフェースでは利用できません。

    • LAN/SFPポートのモードはアクセスポートのみで利用できます。トランクポートでは利用できません。

    • スタック機能に対応した機種でスタック機能が有効な場合は利用できません。

    • 自動的に設定される項目のうちどれか一つでも工場出荷状態とは異なる設定がされている場合、本機能は動作しません。